四旬節も終盤で、13日からは四旬節の最終週、「聖週間(あるいは受難週とも呼ぶ)」英語では、”Holy Week”に入る。私自身、教区の仕事も担当する中で、一昨日はOrange Coast Memorial、Fountain Valley Regional、そしてSaddleback Hospitalと、三つの病院にそれぞれ入院された3人の兄弟姉妹を訪問した。イエスが十字架に架かられる週を前に、肉体的にも精神的にも厳しい状況にある兄弟姉妹とともに、私自身も厳しい境遇に置かれていることも覚える。そのような境遇で、今週は詩編36編を読む。聖週間を迎える時にあって、ふさわしい詩編が与えられていると思う。いつものように、なるべく3回は読んでみてはどうだろうか。そして一回目は気になる言葉や節はなにか? 二回目は、詩編の作者の気持ちになってどのようなことを詠っているのか、よく考えてみよう。そして三回目は、神はこの詩編143編を通して何を語りかけているか思いを巡らせよう。
詩編36編
1: 【指揮者によって。主の僕の詩。ダビデの詩。】
2:神に逆らう者に罪が語りかけるのが/わたしの心の奥に聞こえる。彼の前に、神への恐れはない。
3:自分の目に自分を偽っているから/自分の悪を認めることも/それを憎むこともできない。
4:彼の口が語ることは悪事、欺き。決して目覚めようとも、善を行おうともしない。
5:床の上でも悪事を謀り/常にその身を不正な道に置き/悪を退けようとしない。
6:主よ、あなたの慈しみは天に/あなたの真実は大空に満ちている。
7:恵みの御業は神の山々のよう/あなたの裁きは大いなる深淵。主よ、あなたは人をも獣をも救われる。
8:神よ、慈しみはいかに貴いことか。あなたの翼の陰に人の子らは身を寄せ
9:あなたの家に滴る恵みに潤い/あなたの甘美な流れに渇きを癒す。
10:命の泉はあなたにあり/あなたの光に、わたしたちは光を見る。
11:あなたを知る人の上に/慈しみが常にありますように。心のまっすぐな人の上に/恵みの御業が常にありますように。
12:神に逆らう者の手が/わたしを追い立てることを許さず/驕る者の足が/わたしに迫ることを許さないでください。
13:悪事を働く者は必ず倒れる。彼らは打ち倒され/再び立ち上がることはない。
どんなことに思いを巡らせておられるだろうか? 私にとって気になる言葉としては、7節にある、「あなたは人をも獣をも救われる。」と書いてあり、ひときわ目立つ言葉に見えてくる。この件については、後述したい。
詩編作者の立場を思い、この詩編を読み返すとき、はっきりとした段落が三つあって、それぞれの段落は以下のようなことが要点かと思う。2節から5節は、詩編作者にとって神に逆らうような悪しき者について、これでもかとばかりに、きつい言葉を並べている。「神に逆らう-罪-神を恐れはない-自分を偽り-自分の悪を認めない-悪事-欺き-善を行わない-床の上でも悪事を謀り-身を不正な道に置き/悪を退けない。」 6節以降、10節まではガラリと様相が変わり、美しい主の賛美となる。あまりにも輝かしく、そのままの言葉で再度書きたい。「主よ、あなたの慈しみは天に/あなたの真実は大空に満ちている。恵みの御業は神の山々のよう/あなたの裁きは大いなる深淵。主よ、あなたは人をも獣をも救われる。神よ、慈しみはいかに貴いことか。あなたの翼の陰に人の子らは身を寄せ 、あなたの家に滴る恵みに潤い/あなたの甘美な流れに渇きを癒す。」 そして、11節から13節では、悪しき者と主に従う者についてそれぞれ主への願いが詠われている。
この詩編を通して、神が私たちに何を語りかけておられるか、私が思いを巡らせたことをシェアしたい。 この詩編は、一見、神に背くような悪しき者の滅亡と主に従う者への祝福が詠われているような気もする。しかし、本当にそうなのだろうか? 冒頭にも書いた「人をも獣をも救われる」という言葉が輝いており、私の頭の中に響き続けている。 私たち人間は、神に背いて生活している人々と、神に従順な人々とに分けるようなことはできないと思う。 いやむしろ、全員が神を忘れ、背いて生きてしまう要素がある。 しかし、主なる神は、人をも獣をも救われると、この詩編作者が詠ったように、人間の中にある獣的な要素も含めて救ってくださるように感じる。 人間の自分勝手な思いがあるにもかかわらず、主なる神は、神ご自身が創造されたものすべてを救おうとなさっている。 主イエスが、私たちの罪のゆえに十字架に架かって、すべての民を救われたということは、私たちの認識している罪、あるいは自分では罪だなんて思っていない罪も含めて、十字架に磔(はりつけ)となり、私たちをしっかり神の方に向く者へと生まれ変えさせてくださっている。それは一年に一回イースターの時に起こるのではなく、毎週金曜から日曜の週末に起こっているのだろう。 アーメン。
安達均